虐待の可能性がある時や疑う時、保育士はどうしたらいい?
虐待というと少しドキッとするタイトルかもしれませんが、保育士をしている上で知っておいた方がいいと思う内容の一つです。もちろん、虐待がないに越したことはありません。
しかし、『もしかして…』の時に、一番に気付くことができる可能性があるのが保育士なのです。
今回は虐待の可能性がある時に、保育士はどうすればいいのかを考えていきたいと思います。なかでも、ネグレクトと呼ばれる育児放棄は判断が難しいです。
実例「シングルマザー、夜間のお仕事で我が子を長時間放置など」
保育園は両親共に働いていたり病気等で家庭で保育することが難しい子などがいるため、様々な家庭環境の子がいます。
とある実例なのですが、お母さんが夜働いているため、登園時間は昼前で、帰りは規定の保育時間を必ず過ぎるという母子家庭のお子さんの担任を私はしたことがあります。
お母さんとしては、自分が働いて子どもを育てていかなければ!という思いがあったのだと思うのですが、その子は前日に着た服装のまま翌日も登園したり、給食袋の中身も前日のままということが何度かありました。
これはおかしいと思い、すぐに園長と主任に子どもとその母親について気になることがあると報告しました。同時に日誌とは別に、その子の気になることを日付入りでメモして記録として残すことを始めました。
その時、その子はまだ4歳児でした。その年齢の子にしては言葉の発達も遅く小柄な子で、言葉で伝えられない分、手が出てしまうことも多かったです。
中でも私が一番気がかりだったのが、保育士や友だちに向ける目が、何と言うか『年相応の子のする目ではない』ことです。とても表現しにくいのですが睨むとはまた違った、その違和感は園長・主任・担任以外の保育士にもあり、『もしかしたら…』と言う思いがありました。そして、園の職員全員でその子を注意深く見ていくことになりました。
できることならばお母さんと一対一で話がしたかったのですが、いきなり踏みこんでいくことはできません。まだそのお母さんとの信頼関係も築けていない状態でしたので、機会があればお母さんと子どものことを話したり世間話をしたりするところから始めました。
次第にお母さんも色々と話して下さるようになり、夜働きに出ている間は祖母がたまに様子を見に来るが基本的には子どもが一人で寝ていること、朝は自分が起きれないため朝ごはんの用意ができないことなどを話してくれました。
そうして夜、4歳の子を一人で長時間家に置いていることが分かり、すぐに園長、役場の方、民生委員の方が集まり早急に対策を考えて下さりました。ここまでくると、担任だけ、園だけの力ではどうにもなりません。
最終的には、お母さんは昼間の仕事に転職し、生活も子どもの様子も徐々にですが落ち着いていきました。
こんな時、保育士がしておきたいこと
もしかしたら考えすぎってこともあるかもしれませんが、担任の保育士が感じる違和感は大体当たっていると思います。
あなたが子どもや保護者に『違和感』や『不安』を感じたらすぐに上の先生に相談して下さい。そして、その子に関する記録を日付入りで残しておくことも忘れずに。
傷などがある場合は写真を残しておくと良いと思いますが、これも園長や主任に相談して下さい。
また、家族の方と話ができる環境であれば笑顔で接して下さい。話題をもって話すと言うわけではなく、毎日明るく挨拶をするだけでもいいです。
子どもやその家族を一人にしてしまわないで、子どももその家族も目を配ってあげて下さい。
当たり前のことばかりを記載したかもしれませんが、あなたの発見や行動が子ども達やその家族の未来を、少しでも変えるきっかけになるかもしれません。
この記事について
筆者:yuuna
保育士歴:8年(幼稚園教諭の期間も含む)
投稿日:2016年9月29日
記事編集:はる蔵
編集後記「保育士の気づきと記録が大事」
変化や違和感に気づいて虐待を疑うことも必要
幼児虐待及び児童虐待にも虐待の種類や度合いは異なり、なかなか発覚・発見できないこともあるでしょうし、しつけの考え方によってはどこから虐待にあたるのか難しいケースもあるでしょう。
このように虐待の判断すら難しいことではありますが、まず虐待は発見と通告が大切だと言われます。
虐待の早期発見をするためには、なにかおかしいなと感じたら、勘違いでも気のせいでもいいので、まずは疑いながら様子をみてあげてください。個人的には考えすぎなのが、ちょうどいいのかなと思います。
疑うことで発生する問題もありますが、疑うことで防げる問題もあります。疑うことは失礼にもあたりますけど、それがもし違ったらある意味それは良いことじゃないですか。それこそ本当に虐待の事実があるものの、疑うことなく気づけない方が辛いと思います。
そして保育士の主な役割は、虐待の直接的な解決ではなく虐待の発見でしょう。その発見さえなければ解決にもつながらない。
とにかく何かしらの変化等に気づいた時、自分の思い過ごしだろうとか、まさかそんなことないよねと見過ごしたり、自己解決しちゃったり、違和感をごまかさないようにしましょう。
もしもの時に証明力のあるしっかりした記録を残そう
特定を避けるために、結論や経緯等の詳しいことは一部省きますが、以前受け持った2歳児クラス内に虐待のおそれがある子がいました。
虐待のおそれが主に身体的虐待だったので、毎日登園してきたら注意深く傷の確認。その際に傷があれば本人に「いつどこで?誰が?なぜ?」などと問いかけ、その発言等を記録しておりました。
あきらかに見える位置に傷があれば、保護者と一緒にいるその場で傷がなぜできたのか等を確認しましたが、まだ発言もあやふやな2歳児ということで、保護者も都合の良い言い逃れも多かった。
確たる証拠と言うか証明力となるのは、やはり写真などの映像記録も重要です。
写真の記録の際には、傷×本人と分かる顔が映った全体写真や傷跡のみの写真を工夫して撮影し専用ノートに記録していきました。
yuunaさんもおっしゃっていましたが、日付も忘れずに記録しておきましょう。実際は写真を使うんですが、絵日記のような記録にしておくと見やすいし分かりやすいと思います。
何よりも一番おそろしいのは保育園の休みが続く時でした。もしかしたら大きな傷を隠すために休んでいるのではないかとか、亡くなっているんじゃないかと心底不安にもなりました。
役所・児童相談所などの関連機関への通報・相談・報告・連携はもちろんですが、保育園側でも積極的に毎日電話して様子をうかがったり、お家の付近まで出向きこっそり様子を見に行ってみたり…。
ケースバイケースなのかもしれませんが、虐待のおそれがある子どもを保護してもらうのは簡単ではありませんでした。まずは保育士の記録が重要な証拠になったり、関連機関が本格的に動き出すきっかけとなるでしょうから、抜け目なく記録をとっておいてくださいね。
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虐待のサインって本当に難しいですよね。いまニュースでも毎日たくさんの幼い命が奪われていますが、自分が保育者である限り、そういった子どもたちの第一発見者になる可能性が少なからずあるのだということを念頭において気を引き締めて保育をしていかなければならないことを改めて再確認させていただきました。
日にち付きでの記録は大切ですよね。また、虐待ではなくただ母親がルーズだった…というケースもありますが、もし虐待だった場合にはその資料を自分以外の人が目にすることになりますので誤字脱字にはもちろん気をつけなければならないですし、誰がみてもどの状況だったのかがすぐに想像できるような言葉選びや文章作成をしなければならないですよね。
もしかしたら出しゃばりすぎなのかもという判断が難しいですが、もしものときには出しゃばって最悪な状況にならないように一役かいたいです。